大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岐阜地方裁判所大垣支部 昭和24年(ヨ)35号 決定 1949年6月21日

申請人

全日本自動車産業労働組合

右代表者

中央執行委員長

申請人

全日本自動車産業労働組合東海支部

右代表者

執行委員長

申請人

太平洋工業分会争議団能崎茂雄 外十九名

被申請人

太平洋工業労働組合

右代表者

組合長

主文

申請人等より被申請人に対する本案判決確定に至る迄。

被申請人太平洋工業労働組合が昭和二十四年四月九日申請人全日本自動車産業労働組合から脱退した其の効力を停止する。

被申請人は申請人全日本自動車産業労働組合東海支部太平洋工業分会争議団(別紙当事者目録記載の通り)熊崎茂雄外十九名をして太平洋工業分会の組合員としての地位を保有せしめねばならない。

別紙当事者目録省略。

申請

岐阜地方大垣支部昭和二四年(ヨ)第三五号仮処分申請事件(昭和二四、六、二〇申請)

一、当事者

申請人 全日本自動車産業労働組合

右代表者 中央執行委員長

外 一支部

右代表者 執行委員長

外争議団熊崎外十九名

被申請人 太平洋工業労働組合

右代表者 組合長

二、申請の趣旨

申請人等より被申請人に対する本案判決確定に至る迄。

一、被申請人太平洋工業労働組合が昭和二十四年四月九日申請人全日本自動車産業労働組合から脱退した其の効力を停止する。

一、申請人全日本自動車産業労働組合をして太平洋工業株式会社に対する昭和二十二年九月二十日締結した労働協約に基ずく唯一の団体交渉権ある労働組合たる地位を保有せしめる。

一、被申請人太平洋工業労働組合は申請人等の労働争議の為にする組合活動を妨害してはならない。

との仮処分命令を求める。

三、理由

((一)乃至(四)省略。(105)事件申請書参照。)

五、処が被申請人組合は前記大会に於て脱退したるものなりとしてもはや申請人組合とは何等関係がなくなり、分会加入前の太平洋工業労働組合に復活したものであると言つて昭和二十四年四月十一日岐阜県労政課に名称変更の届出を為し、又全日本自動車産業労働組合に対しても東海支部を通じて脱退届をして来たのである(疎第壱号参照)然しながら本部は前記大会が労働組合の本来の在り方を無視して極めて非民主的であつたので、これが脱退を否認する通達を同年五月十一日為してあるのである。

然るに被申請人組合の御用幹部は会社と当初より意識的且つ計画的な綿密な連絡をとり会社と共謀し、本部及支部をうるさがつてこれを排除しようとし盛んに前記申請人等労働争議の活動を妨害して居る現状にある。

即ち、

(イ)、申請人等に対し会社は御庁昭和二十四年(ヨ)第二十四号仮処分決定以後に於ても「組合が脱退をしたのでどちらの組合に団体交渉に応ずべきか判らなくなつた。だから団体交渉に応ずることが出来ない」と言ふ態度を以て臨んで居る。又右の如き趣旨の通告を昭和二十四年五月二十七日付書面を以て東海支部に通告し、

(ロ)、更に其の後同年六月三日には本部に対し前記覧書に於て申請人等を太平洋工業株式会社との唯一の団体交渉権ある組合として確約して置きながら事情が変更したので右協約を解約すると通告して来て居る。

(ハ)、尚組合事務所の使用の点については当初工場外にありたるものを右組合と結託して申請人等を追ひ出そうとし、その使用妨害禁止の仮処分を昭和二十四年五月六日為さるゝや、今度は工場内正門保安所の一部にこれを移し、被申請人組合の御用幹部にのみこれを使用せしめ、申請人等に対しては工場入口に暴力団を配置して右工場内に立入を禁止して使用せしめず、差別待遇を為して居る。これは労働組合法第十一条に全く違反している。

(ニ)、尚昭和二十四年五月二十三日御庁昭和二十四年(ヨ)第二十四号上位組合脱退の効力停止並に団体交渉妨害禁止の仮処分事件の決定に於て被申請人組合の脱退の効力が停止され居るに拘らず、被申請人組合はこれを無視し右決定は相手方が太平洋工業株式会社であつて我々の組合に対しては決定が為されないのだと言つて全日本自動車産業労働組合よりの脱退をするか加入をするかとの決議又は争議団の解雇を認めるかどうかと言ふが如き申請人等にとつて死活に関する重要問題を議決するに当つてもこれが大会に通知を為すことなく又申請人争議団に対し代表八名のみに限り、唯オブザーバーとして傍聴のみ許すと通知して居る状況である。

(ホ)、同年六月十三日には太平洋工業労働組合なる大会を開催して申請人等の発言及び投票を禁じ、何事かを決議して申請人等に対し同月十六日付馘首反対の為の闘争を止めよと通告して来ている。

これは労働組合法第一条及び第二条の趣旨を全く逸脱しておるものと謂はねばならない。

以上の如く被申請人組合の御 幹部は意識的に会社と結託して申請人等の労働組合本来の活動を妨害している為、申請人等は極めて不利なる状況に於て苦戦を続けているのであつて、申請人等の団結権、団体交渉権、正当なる組合活動の権利は違法に侵害され弾圧されて居る現状に在る。これでは労資対等の原則に基ずくフエアープレーは全うせられない。

凡そ労働組合の目的使命は労働者の地位の安定向上を図るにあり、申請人等はこれが目的実現の為不当なるる会社の馘首反対の為正当なる労働争議の活動を為し居るものであつて、分会員の中にも申請人等と同調し申請人等と協力して闘争を為し居るものが多数あり、前記の如き被申請人等の団結権団体交渉権等は不当に圧迫を蒙つている事は明らかであると謂はねばならない。

斯の如く申請人等は其の団結権団体交渉権に於て回復することのできない損害を蒙つて居るから、かような損害を避け被申請人組合の不当なる活動を防止する為協約の確認大会決議無効確認の本訴に先たち申請の趣旨記載の如き仮処分申請に及んだ次第であります。

岐阜地方裁判所大垣支部御中

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例